会社の防腐剤

こんにちは、ムギです。

今回は「会社を守るためには」をテーマにお話しします。

企業のコンプライアンス意識はますます高くなっているにも関わらず、企業での不祥事は後を絶えません。

間違っていると知りながらも会社の利益のためと思って続けてしまう。従業員も上司や会社には逆らえないと言って間違ったことに従ってしまう。ばれなければ良いと続けて、リークされるまで何十年と続けていた。そうなると、まだそういう企業はあるんじゃないか…なんて疑いも持ってしまいますし、現状ばれてないだけで問題行動を起こしている企業は実際いるでしょう。

そういった”腐敗した企業”というのはある程度存在し、企業活動を続けていればいずれ”腐敗”していくリスクも捨てきれません。だからこそのコンプライアンスなのですが、国はもちろん、労基や行政も監視しきれないのではないでしょうか。

会社を腐敗させるのもそれを食い止めるのも、やはり”中の人”が肝心要となってきます。

腐敗する組織の中の人達とはどんな人達なのか?

『全体主義の起源』『人間の条件』『エルサレムのアイヒマン』などの著者であるハンナ・アーレントは”悪の陳腐さ”について考察しました。少し重い話にはなりますが、簡単に説明します。

ナチスドイツによるユダヤ人虐殺計画において主導的な役割を果たしたアドルフ・アイヒマン。1960年、アルゼンチンで逃亡生活を送っていたところを捕まり、エルサレムで裁判を受けることとなりました。

このとき連行されたアイヒマンの風貌を見て関係者は驚きました。彼があまりにも「普通の人」だったからです。「ナチス親衛隊の中佐でユダヤ人虐殺を指揮したトップ」は、関係者がイメージしていた「冷徹で屈強なゲルマンの戦士」ではなく、小柄で気の弱そうなごく普通の人物だったのです。

この裁判を傍聴していた哲学者のハンナ・アーレントは、その模様を『エルサレムのアイヒマン』として本にまとめました。そしてその中で”悪”というものは、私たちが一般的に考える「悪=普通ではない、特別なもの」ではなく、”陳腐=ありふれていてつまらないもの”と記しました。

そして彼女は”悪”についてこうまとめます。

悪とは、システムを無批判に受け入れることである。

ハンナ・アーレント『エルサレムのアイヒマン』より

まさしくこの言葉が現代で起きる大半の悪を表現しており、かつ、組織において起きる事故や不祥事の大元になっていると私は思います。

皆さんもこういった組織ぐるみでの事故や不祥事を見た時、「誰か一人ぐらい注意したり、気づく人はいなかったのか?」と疑問に思ったことはないですか?

その答えは経営サイドと現場サイドの考え方の乖離と、時間経過による問題意識の風化と言えるでしょう。

ニュースや新聞を見ていると、現場サイドは「上司に命令された、従わないといけない風潮だった」といい、上司や経営サイドは「そのような指示を出した覚えはない、知らなかった」という。どちらも半分本当のことをいい、半分認識が間違っていると思います。

経営サイドは実際問題「知らなかった」で済むはずもありません。マネージャーや総務部で相談は受けていたが小さいことと扱われ社長まで話が行かなかったということはあるでしょう。それでも最終的な責任は社長(代表取締役)にあります。

一方現場サイドにとってみれば会社がなくなってもそこまで困りません。自分が会社から認められない、面倒なことになったら辞めればいいだけです。もちろん待遇が他社よりも断然よければ、会社に問題があったとしても文句言いながらも残るでしょう。そのぐらい自由な立場なのです。顧客のためにも会社を守ろうと本気で考えている従業員なんて数えるほどしかいません。

しかし、こういった現場サイドの意識についても、経営サイドにも問題があります。経営サイドもいちいち難癖つける人よりも、会社の命令に黙って従う人の方を評価します。いわゆる社畜と言われる人間の方が会社にとっては都合がいいからです。

また、経営サイドほど自社の批判に対して否定的な対応をしがちです。きちんと調査もせず、ただ改善命令を出して現場の上司に任せてしまいがちです。当然その上司が問題に関わっていたり、自分のお気に入りの職員の問題だったりすれば、厳しい対応はそこまでせずに流されることはよくあることです。

以上の問題点を踏まえ、経営サイド、現場サイドが気をつけるべきことは何でしょう

まずは現場の状況を正しく知るための報告体制の整備です。

ここで注意することは、現場の裁量の余地を残すことです。これは何でもかんでも報告・承認・依頼などの手続きを細かくしすぎると、却って報告しなかったり虚偽の報告をする人が増えるからです。会社側にとっても受けとる情報が多すぎると業務整理が難しくなります。

もうひとつは人事考課の視点を変えることです。

もちろん文句も言わずに黙って仕事する人は大事。しかし、自分の意見を持ち、上司に対しても間違ったことにはきちんと意見を言える人も大事です。そういった人と、文句ばかりで自分で動こうとはしない人とをしっかり区別し、評価できる仕組みを考える必要があります。

そして現場サイドに求めることはただ一つ。しっかり”思考”して仕事をすることです。

今行っている作業は何のために行っているのか。自分は全体の仕事の中でどういう役割を担っているのか。自分の仕事が顧客や社会に対しどう還元されるのか。きちんと意味を考えて仕事をしましょう。

そういった意味を職場の人が教えてくれることもありますが、ここで重要なのはそれを鵜呑みにするのではなく、きちんと自分なりに咀嚼することです。その中でどうしても納得できないことは職場の上司に思いきって聞いてみましょう。そこできちんと答えてくれるか、「そんなことは考えなくていい」と答えるかでその職場の意識レベルも図ることができます。

最後に現場サイドと経営サイドに共通して言えることは、法令違反や倫理的な問題行動を絶対に許さないポリシーを持つことです。これは本来は全員が持つべきものですが、残念ながら全員にその意識があるわけではありません。だからこそ、まずはあなたが持つべきでしょう。

すなわちあなた自身が会社の”防腐剤”となることです。そしてその”防腐剤”が増えてくれれば、会社は長く続けられ、結果的に会社を守ることになるのです。

何も考えずに言われたことを行うのは歯車の考え方。しかし、会社は人と人が集まってできたもの。良くも悪くも全員の意識が統一されると想像以上の大きな力を生じます。

職場にあふれるどんよりした空気を澄ませ、もやっとしたモノを明快にする。

そんな防腐剤となれる人が今求められています。


参考文献

Amazon/『エルサレムのアイヒマンー悪の陳腐さについての報告【新版】』ハンナ・アーレント 大久保和郎

Amazon/『責任と判断(ちくま学芸文庫)』ハンナ・アーレント、ジェローム・コーン、中山 元 

投稿者: 麦ブログ

介護施設の事務員として働いてます。現在行政書士資格取得のため勉強中。

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