③相手の”顔”を立てる
前項②にも繋がることでもありますが、まず前提条件として「相手を説得すること」「相手を言い負かす」ことを目的にする人がいたら議論は成立しなくなります。
交渉などでも得てして人は「自分が優位になるように進めよう」と思います。相手がどんなに不利になっても自分が優位に立とうとする考えは相手に伝わります。
相手の”顔”、つまりは”アイデンティティー”を傷つけるのは危険です。こちらの隙を見て反撃される恐れもありますし、そのグループから去ってしまう可能性もあります。
しかし、どうしても相手に意見を変えてもらいたいこともあるでしょう。
その時こそ、「相手の”顔”に泥を塗らず、引き立てるにはどうしたらよいかを考えるべき」と筆者は言います。具体的には、相手の考えに態度・姿勢ともに傾聴し、「あなたが今までの自分自身の意見と異なること・考えをもっても、あなた自身が変わるわけではない」ことを根気よく話していく。そうすれば、今まで反対派だった相手を傷つけないで話すことができ、意見を変えてくれる可能性も高くなります。
大事なのは、話し合いの場において「間違ったこと」「皆と違うこと」を言ってもいいんだという安心感を与えてあげることです。そういう場の空気が備わってこそ、生産的な議論が起こるようになるのです。
以上が「不毛な争いと生産的な対立の違い」を把握する上で必要な3つのポイントを説明しました。
この3つのポイントを踏まえ、「生産的か不毛か」「対立があるか、ないか」をそれぞれ自分なりに分類してみました。
<生産的で対立のある議論>
・議論の目的を共有し、お互いに文脈を理解している
・白熱した議論が交わされるが、お互いの”顔”を潰すことなく、いい場で終わる
・対立意見があることで当初よりも深みのある案が実行される。
<不毛で対立のある議論>
・議論の目的が共有されず、お互いに文脈を理解していない。
・対立意見同士が言い争い、結局何も決まらず、お互いに不満を持ちながら終わる
・方向性が統一されず、その場限りのことだけが実行される。メンバーの行動が揃わない。
<生産的で対立のない議論>
・議論の目的を共有し、お互いに文脈を理解している
・「とりあえずやってみよう」の精神が共有され、「やりたいこと」が特に深く議論されることなく決まる
・実行数は多いが、その分失敗や無駄も多い。
<不毛で対立のない議論>
・議論の目的が共有されず、お互いに文脈を理解していない。
・お互いに空気を読みあい、少数派の意見は無視するか多数派で潰される。争いはないが、誰しも不満が残ったまま終わる
・無難なことしか実行されず、改革されることはない。
上記の分類から、自分達の話し合いがどういった状況になっているかが分かると思います。
<不毛で対立のある議論>には、匿名性の高いネット環境などでもよく見られます。お互いに”顔”を合わせていたら絶対に言わないような言葉も平気に出てきます。また、行政と住民のような立場がはっきり分かれているような話し合いの場でも、攻撃性の高い人がよく見られます。
<生産的で対立のない議論>は一見良いように感じますが、反対意見が言いづらいという環境は<不毛で対立のない議論>と同じものがあります。こういった環境だと、反対意見を言う人を「批判的・消極的」と捉えられ、メンバーとして対等にされないことがあります。また、「失敗や無駄が多い」と記しましたが、その被害や後始末を被るのは、結局は”現場のスタッフ”だということも理解してください。トップダウン方式の企業にもこの傾向が強いです。
<不毛で対立のない議論>では議論においては対立がなくても、裏では職員同士のいがみ合いが多いのも特徴です。声の大きい人の意見がだけが通る傾向もあります。議論そのものが儀式化され、成長性は著しく下がっている状況です。
<議論>がどのようになっているかで職場の雰囲気や企業の方向性まで見えてきませんか?それは「スタッフ全員が同じ方向を向き、気付きやアイデアを常に言い合える環境になっているか」を示しているからではないでしょうか?
議論といえど結局は人との多人数でのコミュニケーション。いろんな人がいる中で話し合いに絶対的な答えやテクニックはありません。だから大半の人は何とかして変えていこうとは思わない。
しかし、本気で成果を求め、企業や組織を良い方向に向けたいのであれば、まず議論の雰囲気作りから始めた方がいいでしょう。
行うこととしては、
①会議・話し合いの目的・必ず決めたい議題を周知する。議論の中でのルールや”型”も統一し、周知する。
②議長(話し合いにおけるリーダー)は、過激な発言や態度の悪い者、発言者の発言を聞かない者、かぶせて発言する者を注意する。
③反対意見などもきちんと話を聞き、メモを取るやさらに追加の質問をするなど相手の訴えを尊重する行動をする。
④「決めること」だけを目的とせず、「前回決まったこと」の評価等の意見を求める。
⑤うるさい時は静かにさせ、静かすぎる時はリーダーから話をふったり、場合によっては少しストレッチをさせたりと話し合いの時間の中に緩急をつける。
以上をまとめとし、それぞれの職場(組織)で出来ることから改善してみては、いかがでしょうか。
また、この本に興味を持った方は、今回紹介した以外にもたくさんのテクニックがありますので、ぜひ買って読んで頂き、コミュニケーション・ツールとして実践してみてください。一番下ににリンクを貼っております。
最後までご購読頂き、ありがとうございました。
参考文献(Amazon公式HP参照)
