”戦わずして勝つ”者こそ真の覇者

こんにちは、ムギです。

今回は「トゥキディデスの罠と『孫子の兵法』」をテーマにお話しします。

「トゥキディデスの罠」とは「新しく台頭する国家は自国の権利を強く意識し、より大きく影響力と敬意を求めるようになる。その圧力に直面した大国は状況を恐れ、不安になり、新興国を叩こうとする」ジレンマを意味します。

トゥキディデスは古代ギリシャの歴史家です。トゥキディデスは覇権国スパルタに対する新興国アテネの挑戦を『戦史』にまとめました。その内容にちなみ、米ハーバード大学のグレアム・アリソン教授は、新興国が覇権国に挑む際に生じるジレンマを「トゥキディデスの罠」と命名しました。

アリソン教授は自身の研究の中で、過去500年間の覇権争いのうち75%が戦争に至ったことが分かりました。現在も同じような状況が懸念され、回避する方法はないのか今も研究されていますが、決定的な手段というのは見つからない状況です。

戦争は地政学の観点や、政治、経済、技術革新など多くの要因がからんできますが、むしろそういった自分達の利益しか考えていないトップがいれば戦争は起こります。一番大事なのは自国も相手国も含め、多くの命を奪う行為であり、最悪の場合、自国すべての領土を相手に支配されてしまう恐れも含めます。それを考えたら「戦争をしない」ことしか選択肢はないはず。戦争は、勝っても負けても悲劇しか生みません。

古典として愛読される『孫子の兵法』にも、国家の慎重な決断の重要性が説かれています。

「孫子曰わく、兵とは国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。」

『孫子の兵法』計篇

「戦争とは国家の大事であり、国民の死活が決まり、国家の存亡の別れ道であるから、よく熟慮せねばならない」ことを意味します。孫子はこれを書の一番始めに書かれています。戦法書であるずの兵法に書かれる内容としては以外に感じるかもしれませんが、孫子は「戦争のリスク」をきちんと示しています。

ところで、「トゥキディデスの罠」の例となったアテネとスパルタの戦争はどうなったのでしょうか?

それが世界史で学ぶ「ペロポネソス戦争」です。これは典型的な民主制を発展させ、エーゲ海を中心に覇権を広げていったアテネ率いるデロス同盟と、盟主として鉄壁の軍事力を持つスパルタ率いるペロポネソス同盟との争い。簡潔にですが、以下にまとめます。


前431年
 スパルタ王アルキダモス率いるペロポネソス同盟がアテネの本拠アッティカ地方に侵入したことから始まる。
 これに対しアテネはペリクレスの発案で籠城戦に持ち込む。

 その頃、アテネで疫病が流行し、市民の3分の1が亡くなる事態に陥る。ペリクレス自身も発症し、亡くなってしまう。
 人民の多くを失ったアテネだが、クレタ島などから傭兵を雇い入れ戦争は続行。一時はアテネ側が有利だった。

前421年
 スパルタ、アテネ側も疲弊し、和平派のニキアスにより休戦のための講和を結ぶ(ニキアスの平和)

前415年
 アテネの主戦派アルキビアデスに扇動され、シチリアに艦隊を派遣することが決まる。アルキビアデスに召喚命令が下されるが、直後に敵国であるスパルタに亡命する。
 替わって開戦を反対していたニキアスが指揮官として率いることになり、スパルタとシチリアのシラクサの連合軍と戦うが大敗する。ニキアスも戦死する。

 一方、亡命したアルキビアデスの入れ知恵により、スパルタはアテネのアッティカ地方を占領する。このアテネの敗北によりデロス同盟は次々と離反が相次ぐ。

 スパルタはアケメネス朝ペルシア帝国とスパルタ=ペルシア同盟を結び、その資金援助により海軍を増強する。

前404年
 アテネは全面降伏した

以上がペロポネソス戦争の大まかな流れです。

ではその後スパルタは覇権を握り続けたのか?答えは否です。

その後もギリシャでは覇権争いが続き、スパルタは前371年に「レウクトラの戦い」でテーバイに破れます。そのテーバイもまた、前338年の「カイロネイアの戦い」にてマケドニアに破れます。そしてそこからアレクサンダー大王の支配によりギリシャはほぼ制圧されるのです。

ペロポネソス戦争を間近で見ていたトゥキディデスは、この戦争がギリシャ世界全体を揺るがす大規模な戦いに発展すると見抜いていました。現にこの一連の戦いにより、ギリシャのポリス社会は疲弊し、衰退期に入るきっかけとなりました。

先程の『孫子の兵法』の続きには、「国家の大事」を考慮する上で「五事」を観点に入れることを記しています。「五事」とは「道、天、地、将、法」を表します。内容は以下の通りです。

「道」…国民と国家とを同心にならせる政治のあり方、計画、目標
「天」…時代の流れ価値観の変化、自然の巡り
「地」…土地の情勢、自分がいるフィールド
「将」…トップにとして必要な能力(智・信・仁・勇・厳)
「法」…法律、ルール

これらの条件がきちんと揃ってなければまず戦えません。その上で相手国のことを知らなければ勝てません。さらに時代性を分からなければ世界中から批判され、制裁をくらいます。世界から孤立すれば余程の資源大国や食料時給率の高い国ではない限り厳しい情勢になります。ペロポネソス戦争はまさしく両者ともにこの「五事」を読み違えていたと言えます。

『戦史』のような歴史や、『孫子の兵法』のような古典を学ぶことの意義は現代においてもあります。現代では戦争で覇権を取ろうとするのは、もはや自滅行為です。

それであるならもっと他国からも認められる方法で覇権をとることを目指した方がいいはずです。医療革命、スマートシティ、SDGs、宇宙ビジネスなどキーワードは既にあります。人類の課題に貢献できた国が次の覇権国家になると私は思います。

「幸福の秘訣は自由にあり、自由の秘訣は勇気にある。」

トゥキディデス

「百戦百勝は善の善なる者に非(あら)ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり。」

『孫子の兵法』謀攻篇より

移り変わる時代の中にも、今も昔も変わらない鉄則があるように思えるのです。

投稿者: 麦ブログ

介護施設の事務員として働いてます。現在行政書士資格取得のため勉強中。

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